2014/02/08

相加相乗平均の不等式の応用〜関数の最小値を求める〜

分野: 不等式  レベル: 入試対策

相加相乗平均の不等式(AM-GM不等式)の応用の一例として,特殊な形の関数の最小値を求める方法を紹介します。

関数の最小値は微分法を使えば求めることができるが,以下のような特殊な形をしていればAM-GM不等式を用いて解くこともできる。
$f(x)=ax^m+bx^{-n}\hspace{10mm} (a,b > 0)$
(ただし $m,n$ は正の有理数)

そのエレガントな方法とは(大雑把に言うと),$n$ 個の $\dfrac{a}{n}x^m$ と $m$ 個の $\dfrac{b}{m}x^{-n}$,つまり積が定数になるように調節した$(m+n)$ 個の非負の数にAM-GM不等式を用いるというものです。(上の説明は $m,n$ が整数のときのみ通用しますが,一般の有理数に対しても同様の手法が使えます。)

上の説明では抽象的でわかりにくいと思うので,具体例で説明します。

問題1

  $f(x)=x+\dfrac{1}{x^2}$ の $x>0$ の範囲での最小値とそのときの $x$ を求めよ。
解答
$x+\dfrac{1}{x^2}\\=\dfrac{x}{2}+\dfrac{x}{2}+\dfrac{1}{x^2}\\
\geq 3\sqrt[3]{\dfrac{x}{2}\cdot \dfrac{x}{2}\cdot \dfrac{1}{x^2}}\\
=3\sqrt[3]{\dfrac{1}{4}}$
等号成立条件は,$\dfrac{x}{2}=\dfrac{1}{x^2}$
つまり,$x=\sqrt[3]{2}$ のとき。

1行目から2行目にかけてAM-GM不等式が使えるように変形するのがポイントです。

また,$a, b$ がともに負の場合の関数の最大値を求めるのも同様にできます。

問題2

  $f(x)=-x^2-\dfrac{1}{\sqrt{x}}$ の最大値とそのときの $x$ を求めよ。
解答
$x^2+\dfrac{1}{\sqrt{x}}=x^2+\dfrac{1}{4\sqrt{x}}+\dfrac{1}{4\sqrt{x}}+\dfrac{1}{4\sqrt{x}}+\dfrac{1}{4\sqrt{x}}\\
\geq 5\sqrt[5]{x^2\cdot \dfrac{1}{4\sqrt{x}} \cdot\dfrac{1}{4\sqrt{x}}\cdot\dfrac{1}{4\sqrt{x}}\cdot\dfrac{1}{4\sqrt{x}}}\\
=\dfrac{5}{4}\sqrt[5]{4}$
等号成立条件は,$x^2=\dfrac{1}{4\sqrt{x}}$
つまり,$x=4^{-\frac{2}{5}}$ のときに最大値$-\dfrac{5}{4}\sqrt[5]{4}$ を取る。

ただし,項が3つ以上ある場合にはこの小技は使えないので注意しましょう。(等号成立条件を満たす $x$ が存在しなくなる)

まあ実用上は微分法だけ知っていれば問題ありませんが,この方法を覚えると以下の様な嬉しい事があります!

  • 微分法を用いるよりも若干速く解ける
  • 検算に使える
  • エレガント

ちなみに,この考え方を工夫すると分母は二次,分子が一次の分数関数の極値を求めることもできます。→分数関数の極値を求める2つのテクニック

また,$1=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2}$ というように「分解する手法」は様々な応用例があります。例えば→自然対数の底に収束することの証明や,以下の数学オリンピックの問題。

数オリの問題に挑戦

2012年国際数学オリンピックアルゼンチン大会の第2問です。

問題

$3$ 以上の整数 $n$ と,正の実数 $a_2,a_3,\cdots,a_n$ が $a_2a_3\cdots a_n=1$ を満たしているとき以下の不等式を証明せよ:
$(a_2+1)^2(a_3+1)^3\cdots(a_n+1)^n > n^n$

方針:両辺の対数を取りたくなりますが条件式がうまく使えません。そこで,相加相乗平均の不等式を用いて1項ずつ評価することを考えます。累乗根とべき乗が相殺するように $1$ を分解します。

解答

相加相乗平均の不等式より,
$(a_2+1)^2\geq 2^2a_2$
$(a_3+1)^3=(a_3+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2})^3\geq \dfrac{3^3}{2^2}a_3$
・・・
$(a_n+1)^n=(a_n+\dfrac{1}{n-1}+\cdots+\dfrac{1}{n-1})^n$ $\,\geq \dfrac{n^n}{(n-1)^{n-1}}a_n$
これらを辺々掛けあわせれば題意の不等式を得る。(等号成立条件が全て満たされることはないので $\geq$ が$ >$になる)

追記:項が3つ以上あると使えない理由

読者の方に質問を頂いたので補足します。

$2x+x^2+\dfrac{1}{x^3}$ の $x>0$ での最小値を求めよ

この問題に相加相乗平均の不等式を用いると $2x+x^2+\dfrac{1}{x^3}\geq 3\sqrt[3]{2}$ となります。この不等式は正しいのですが,等号を満たす $x$ が存在しないのです。
実際に等号成立条件を確認してみると,$2x=x^2=\dfrac{1}{x^3}$ となり,どのように $x$ を選んでも等号成立条件を満たすことはできません。

上記のような質問は大変ありがたいです。質問お待ちしています!

Tag: 国際数学オリンピックの過去問

分野: 不等式  レベル: 入試対策