2014/02/07

相加相乗平均の不等式とそのエレガントな証明

分野: 不等式  レベル: 最難関大学

相加相乗平均の不等式と呼ばれる最も有名な不等式を紹介します。

(i)$ a, b\geq0$ のとき, $a+b\geq 2\sqrt{ab}$
等号成立条件は, $a=b$
(ii)$ a, b, c\geq0$ のとき, $a+b+c\geq 3\sqrt[3]{abc}$
等号成立条件は, $a=b=c$
(iii)$ a_1, a_2, \cdots, a_n\geq0$ のとき,${\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i\geq n\sqrt[n]{\prod_{i=1}^n a_i}}$
等号成立条件は, $a_1=a_2=\cdots=a_n$

ただし,$\displaystyle{{\prod_{i=1}^n a_i}}$ は $a_1$ から $a_n$ までの全ての積を取ったものを表します。

相加相乗平均の不等式について

  • 不等式の左辺を $n$ で割ったものを相加平均,右辺を $n$ で割ったものを相乗平均と言います。
  • (i), (ii)はそれぞれ(iii)で $n=2, n=3$ の場合に相当します。つまり,(iii)は(i), (ii)の一般化になっています。
  • 実用上は(i), (ii)が不等式の証明や,関数の最大最小値を求めるときに威力を発揮することが多いです。
  • 実戦で使いこなすのにはそれなりのテクニックが必要になります。→相加相乗平均の不等式の応用〜関数の最小値を求める〜

二変数,三変数の場合の証明

(iii)の証明に比べて(i)と(ii)の証明は簡単です!

二変数の相加相乗平均の不等式の証明

証明したい不等式の両辺を二乗する;
$a^2+2ab+b^2\geq 4ab$
移項すると以下と同値:
$(a-b)^2\geq 0$
これは明らかに成立する!

(三変数の相加相乗平均の不等式の証明)
因数分解公式(3つの立方和)の中ほどで証明しています。

相加相乗平均の不等式の証明

以下では,相加相乗平均の不等式(iii)のエレガントな証明を紹介します。
有名な不等式だけに,証明方法はたくさんあります。例えば,

  • 一般的な数学的帰納法を用いる方法
  • forward-backward-induction(双方向帰納法)を用いる方法
  • (左辺)ー(右辺)を $a_n$ の関数だと思って微分する方法
  • 指数関数を用いる方法

などがあります。(参照:wikipedia
今回はその中でも最もエレガントな指数関数を用いる方法を紹介します。
(誘導付きで横浜市立大学の入試問題として出題されている
追記:誘導なしで徳島大学でも出題されたことがあるらしい)

※数Ⅲの知識が必要です。見やすくするために $e^x$ のことを $\exp(x)$ と書きます。

(iii)の証明
指数関数の有名な不等式  $e^x\geq x+1$ ・・・(※) を用いる。
この不等式は有名なマクローリン型不等式である。
表記簡略化のため${\displaystyle m=\dfrac{\sum_{i=1}^{n}a_i}{n}}$ とおき,$x=\dfrac{a_i}{m}-1$ を(※)に代入する:
$\exp(\dfrac{a_i}{m}-1)\geq \dfrac{a_i}{m}$
この式を $i=1$ から $n$ までつくり辺々掛け合わせると以下のようになる:
$\exp(\dfrac{\sum_{i=1}^{n}a_i}{m}-n)\geq \dfrac{\prod_{i=1}^n a_i}{m^n}$
上の不等式において左辺の指数の中身は $m$ の定義より $0$ と等しいので以下の式を得る:
$m^n\geq {\displaystyle \prod_{i=1}^n a_i}$
両辺の $n$ 乗根をとり,両辺 $n$ 倍して $m$ をもとに戻すと(iii)を得る。

次に等号成立条件について考える。(※)の等号成立条件は $x=0$ なので,(iii)で等号が成立する必要十分条件は全ての $i$ に対して $\dfrac{a_i}{m}-1=0$ が成立することであり,これは(iii)の主張と一致する。


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