2014/03/28

log2に収束する交代級数の証明

分野: 極限,微分  レベル: 最難関大学

メルカトル級数:
$1-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{4}+\cdots=\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{(-1)^{k-1}}{k}=\log 2$

ニュートンメルカトル級数とも呼ばれる有名な無限級数です。
分数を交互に足し引きしてくと $\log 2=0.693\cdots$ になります。 $\log 2$ が出てくるのが神秘的で美しいですね。

交代級数

交互に足し引きしていく級数のことを一般に交代級数とか交項級数とか言います。この $\log 2$ に収束する交代級数は最も有名な交代級数で,この公式を背景とした入試問題が頻繁に出題されています。
このページでは題意の交代級数が $\log 2$ に収束することを巧妙な式変形と区分求積法を用いて示します。

ちなみに次に有名な交代級数はライプニッツ級数です。→グレゴリーライプニッツ級数の2通りの証明

準備:交代級数を変形する

題意の交代級数をうまく式変形することによって全ての項を足し算にすることができます:

$\displaystyle\sum_{k=1}^{2n}\dfrac{(-1)^{k-1}}{k}=\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{n+k}$

この恒等式自体有名で,導出方法も美しいので覚える価値があります。

上記の恒等式を一般の $n$ について証明する前に,$n=2$ の場合で試してみます。

$1-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{4}\\
=(1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{4})-2(\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4})\\
=(1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{4})-(1+\dfrac{1}{2})\\
=\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{4}$

この巧妙な式変形を用いて一般の場合も同様に証明できます。

上記恒等式の証明

$\displaystyle\sum_{k=1}^{2n}\dfrac{(-1)^{k-1}}{k}=(\sum_{k=1}^{2n}\dfrac{(-1)^{k-1}}{k}+2\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{2k})-2\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{2k}\\
=\displaystyle\sum_{k=1}^{2n}\dfrac{1}{k}-\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{k}\\
=\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{n+k}$

上記の恒等式は $n$ に関する数学的帰納法を用いて証明することもできるのですが,この式変形は美しいのでみなさんに是非覚えていただきたいです!

区分求積法を用いた証明

題意の交代級数が $\log 2$ に収束することを示すには,
$\displaystyle\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{n+k}=\log 2$
を示せばよいわけです。
リミットとシグマを見たら区分求積法が使えそうと疑うのが定石です:
$\displaystyle\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{n+k}=\lim_{n\to \infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{1+\tfrac{k}{n}}\\
=\displaystyle\int_0^1\dfrac{1}{1+x}dx\\
=\log 2$

$\log 2$ に収束することが証明出来ました!高校数学の知識のみで収束する値が求められる交代級数はこの級数くらいしかありません。ちなみに,マクローリン展開を用いれば題意の交代級数が $\log 2$ に収束しそうだということが直感的に分かります。

マクローリン展開を用いた直感的な説明

log(1+x)のマクローリン展開を用います:
$\log (1+x)={\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}}(-1)^k\dfrac{x^{k+1}}{k+1}=x-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^3}{3}\cdots$

この式に $x=1$ を代入すると求める式を得ることができます!ただし,$\log (1+x)$ のマクローリン展開が $x=1$ で成立することは保証されていません。

難しい話をすれば,$\log (1+x)$ のマクローリン展開の収束半径が $1$ となるので, $x$ に $1$ 以上の値を代入してはいけないのです。この場合は $x=1$ でもマクローリン展開の式が成立しますが,この方法は交代級数を求める正しい証明にはなっていないのであくまで直感的な理解の参考ということで。

補足:この交代級数は絶対収束はしない

一般的な級数 $\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}a_k$ においてすべての項の絶対値の和 $\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}|a_k|$ が収束するときもとの級数は絶対収束するといいます。絶対収束すると微分や積分と順序が交換できたりといろいろ嬉しいことがあります。

しかし,残念ながら $\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{1}{k}$ は無限大に発散する(→調和級数1+1/2+1/3…が発散することの証明)のでこの交代級数は絶対収束はしません。

全部足すと発散するけど交互に足し引きすると $\log 2$ になるんですね。

分数をどんどんたし引きしていくと $\log 2$ になるなんてとても意外

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