最終更新:2016/12/19

算術幾何平均とレムニスケートの長さ

分野: 積分  レベル: マニアック

$1$ と $\sqrt{2}$ の算術幾何平均 $M(1,\sqrt{2})$ は,単位円周の長さ $l$ とレムニスケートの長さ $L$ の比に等しい:
$M(1,\sqrt{2})=\dfrac{l}{L}$

$l=2\pi$ です。$M(1,\sqrt{2})$ と $L$ の意味は後述します。

算術幾何平均

$a_0=a,b_0=b$ を初期値として,以下の漸化式で数列 $a_n,b_n$ を定めます:
$a_{n+1}=\dfrac{a_n+b_n}{2}$
$b_{n+1}=\sqrt{a_nb_n}$

それぞれ相加平均(算術平均)と相乗平均(幾何平均)です。

このとき,2つの数列 $a_n$ と $b_n$ は $n\to\infty$ で同じ値に収束します(*)。この値を $a$ と $b$ の算術幾何平均と呼びます。この記事では $a$ と $b$ の算術幾何平均を $M(a,b)$ と書くことにします。

(*)の証明の概略

$b\leq a$ の場合を考える($a\leq b$ の場合も同様)。

相加相乗平均の不等式と帰納法を使うと,
$b\leq b_1\leq b_2\leq \cdots \leq a_2\leq a_1\leq a$
が分かる。

単調で有界な数列は収束するので,2つの数列は収束する。その収束先を $\alpha,\beta$ とすると,漸化式より $\alpha=\dfrac{\alpha+\beta}{2}$ となり,$\alpha=\beta$ が分かる。

ちなみに,同様に算術調和平均や調和幾何平均も考えることができます(→調和平均について)。

レムニスケートの長さ $L$

$r^2=\cos 2\theta$ という式で表される曲線をレムニスケートと言います(より一般には $r^2=2a^2\cos 2\theta$)。
lemniscate
この曲線の長さを $L$ とすると,
$\dfrac{L}{4}=\displaystyle\int_0^1\dfrac{dx}{\sqrt{1-x^4}}$
が成立します。

証明

弧長積分の公式の極座標版を使うと,
$\dfrac{L}{4}=\displaystyle\int_0^1\sqrt{1+r^2\left(\frac{d\theta}{dr}\right)^2}dr$

となる。$r^2=\cos 2\theta$ の両辺を $r$ で微分すると,
$2r=-2\sin 2\theta\dfrac{d\theta}{dr}$
なので,

$\dfrac{L}{4}=\displaystyle\int_0^1\sqrt{1+r^2\dfrac{r^2}{\sin^2 2\theta}}dr\\
=\displaystyle\int_0^1\sqrt{1+\dfrac{r^4}{1-r^4}}dr\\
=\displaystyle\int_0^1\dfrac{dr}{\sqrt{1-r^4}}$

冒頭の定理の証明(の概略)

証明の概略

実は,
$\dfrac{\pi}{2}\div\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{d\theta}{\sqrt{a^2\sin^2\theta+b^2\cos^2\theta}}$
が算術幾何平均 $M(a,b)$ と一致することが知られている(→補足)。

$a=1,b=\sqrt{2}$ のとき定積分は,

$\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{d\theta}{\sqrt{1+\cos^2\theta}}$

となるが,$\cos\theta=x$ とおくと,$\dfrac{dx}{d\theta}=-\sin\theta$ なので上式は,
$\displaystyle\int_1^{0}\dfrac{1}{\sqrt{1+x^2}}\cdot\dfrac{dx}{-\sqrt{1-x^2}}\\
=\displaystyle\int_0^1\dfrac{dx}{\sqrt{1-x^4}}$
となる。

これは先ほど証明したように,$\dfrac{L}{4}$ なので,
$M(1,\sqrt{2})=\dfrac{\pi}{2}\div\dfrac{L}{4}\\
=\dfrac{l}{L}$

補足:全然自明じゃないです(発見した Gauss すごい)。詳細は例えば Arithmetic-Geometric Mean of Gauss の Gauss’ Second Proof を参照してください。

@nagomi_osaka さんのツイートに inspire されて書いた記事です。楽しかったです!
分野: 積分  レベル: マニアック