2015/05/16

絶対収束と条件収束の意味と具体例

分野: 解析  レベル: 大学数学

無限級数の絶対収束と条件収束について。絶対収束なら収束することの証明,絶対収束するとなぜ嬉しいのか。

注:絶対収束,条件収束は「数列」に対する議論です。一方,各点収束,一様収束は「関数列」に対する議論です。→各点収束と一様収束の違いと具体例

絶対収束,条件収束の定義

この記事では数列の各項 $a_n$ は実数とします。

・無限級数の収束(高校数学)
数列 $S_n=\displaystyle\sum_{i=1}^na_i$ が収束するとき,無限級数 $\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i$ は収束すると言います。

・絶対収束
各項の絶対値を取った和:$\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}|a_i|$ が収束するとき,$\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i$ は絶対収束すると言います。

・条件収束
収束するが,絶対収束しないような無限級数を条件収束すると言います。

具体例

条件収束の例として非常に有名な交代級数です!

例1
$1-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{4}+\cdots$ は条件収束する

絶対収束すれば収束

定理:$\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i$ が絶対収束すれば,もとの級数自身も収束する。

各項の絶対値を取って符号を揃えてるので,絶対収束の方が厳しい条件であるというのは感覚的には当たり前ですね。

一応ちゃんと証明しておきます(コーシー列について知らない人は飛ばしてください)。

証明

任意の $m,n\:(m <n)$ に対して,三角不等式より
$|a_m+a_{m+1}+\cdots +a_n|\leq |a_m|+|a_{m+1}|+\cdots +|a_n|$
(以下の二つ目の→で使う)

よって,
$\displaystyle\sum_{i=1}^n|a_i|$ が収束
→ $\displaystyle\sum_{i=1}^n|a_i|$ がコーシー列
→ $\displaystyle\sum_{i=1}^na_i$ がコーシー列
→ $\displaystyle\sum_{i=1}^na_i$ が収束

つまり,絶対収束なら $\displaystyle\sum_{i=1}^na_i$ は収束する。

絶対収束だとなぜ嬉しいのか

無限級数が絶対収束すると,有限和のときに可能な様々な操作が自由に行える。

・和の順序交換
数列 $a_n$ の各項を並べ替えた数列を $b_n$ とする(厳密には正の整数全体から正の整数全体への全単射を用いて定義される)。 $\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i$ が絶対収束するなら,$\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i=\sum_{i=1}^{\infty}b_i$
つまり,順番を好きに並び替えることができる。

注:条件収束だと(無限個の)順序交換は許されません。例えば $1-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{4}+\cdots$ をうまく並び替えることで $\dfrac{1}{2}\ln 2$ にできます(実はうまく並び替えると任意の実数に収束させることができる!)→英語版wikipedia


・畳み込み
絶対収束する二つの無限級数:$\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i$,$\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}b_i$ について考える。 $c_i=\displaystyle\sum_{k=1}^ia_kb_{i+1-k}$ とおくと,
$\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}c_i$ は絶対収束し,その値は $\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}c_i=\sum_{i=1}^{\infty}a_i\sum_{i=1}^{\infty}b_i$

なお,余談ですが畳み込みについては合成積(畳み込み)の意味と応用3つをどうぞ。

最近急に暑くなりましたねえ。
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