2014/05/14

アーベルの総和公式とその解釈


アーベルの総和公式:
$\displaystyle\sum_{k=1}^na_kb_k=A_nb_n-\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}A_k(b_{k+1}-b_k)$
ただし,表記簡略化のために $A_k=\displaystyle\sum_{i=1}^ka_i$ とおいた。


アーベルの変形公式,アーベルの変形法,Abel transformationなどとも呼ばれます。

アーベルの総和公式の具体例

アーベルの総和公式はパッと見ただけではイメージがつかみにくいです。というわけで,まずは $n$ が小さい場合を具体的に書き下してみます。

$n=1:a_1b_1=a_1b_1$
$n=2:a_1b_1+a_2b_2=(a_1+a_2)b_2-a_1(b_2-b_1)$
$n=3:a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3\\
=(a_1+a_2+a_3)b_3-a_1(b_2-b_1)-(a_1+a_2)(b_3-b_2)$

右辺の項同士がうまくキャンセルされて確かに恒等式となっていることが分かります。
具体例が確認できたところで,次はアーベルの総和公式の証明(図形的な説明)にうつります。

図形的な解釈

アーベルの総和公式は簡単な代数計算で証明できますが,ここでは図形的な方法を紹介します(この方法は数列 $a_k,b_k$ の各項が正の場合にのみ使えます)。

アーベルの総和公式

$n=4$ の場合について説明します。
図において, $a_i$ は小さい長方形の横幅を,$b_i$ は下から $i$ 個分の長方形の縦幅の和を表しています。
$\displaystyle\sum_{k=1}^na_kb_k=A_nb_n-\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}A_k(b_{k+1}-b_k)$

  • 左辺は水色の部分の面積
  • 右辺第一項は大きい長方形全体の面積
  • 右辺第二項は黄色の面積

部分積分との関係

実は,アーベルの総和公式は部分積分を離散化したものに対応しています。

以下は大雑把な議論で,数学的に厳密な話ではありませんが,部分積分との対応を考えるとアーベルの総和公式のイメージが湧きやすいと思います。

(部分積分を離散化する)
部分積分の公式:$\displaystyle\int_0^n fgdx=[Fg]_0^n-\int_0^nFg’dx$
(ただし,$f$ は $F$ の微分)
ここで「離散化」を行う。すなわち,積分はシグマに,微分は差分にする:
$\displaystyle\sum_{k=1}^nf(k)g(k)=F(n)g(n)-\sum_{k=1}^{n-1}F(k)(g(k+1)-g(k))$
(離散化するときの積分区間が少し不自然だが)これはアーベルの総和公式になっている:
$\displaystyle\sum_{k=1}^na_kb_k=A_nb_n-\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}A_k(b_{k+1}-b_k)$

部分積分は,$fg$ が積分しにくいときに $Fg’$の積分に帰着させる公式でした。
そのアナロジーとして,アーベルの総和公式は数列の積 $ab$ の和が計算しにくいときに $a$ の和と $b$ の差分で評価する式とみなせます。

このような目的意識のもとでアーベルの総和公式には多数の応用があります。例えば,n変数の不等式証明のテクニックや,karamataの不等式の証明などがあります。以下では応用例の1つとしてアーベルの不等式を紹介します。

アーベルの不等式

アーベルの不等式(数列の積の和を評価):
$b_1\geq b_2\geq\cdots\geq b_n>0$
及び $k=1,2,\cdots,n$ に対して $m\leq A_k\leq M$
が成立するとき,
$b_1m\leq \displaystyle\sum_{k=1}^na_kb_k\leq b_1M$

証明

アーベルの総和公式
$\displaystyle\sum_{k=1}^na_kb_k=A_nb_n+\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}A_k(b_k-b_{k+1})$
において,$A_k$ を $m,M$ に置き換えたものがアーベルの不等式の最左辺,最右辺になっている。

最初見た時はひるむような式ですが,イメージが分かればたいしたことありません